原状回復と通常の使用の違い
原状回復という言葉は、入居前の新品に戻すことと同じではありません。国土交通省のガイドラインは、賃借人が借りた当時の状態に戻すことのうち、通常の使用で生ずる損耗や経年変化を除いた部分、という整理をしています。これは一般的な参考です。契約の特約や、実際の傷の原因で、個別の結論は変わり得ます。
読む順序は、言葉の定義、契約の特約、目の前の傷、の三つです。
ガイドラインが例にしているもの
ガイドラインの別表には、負担の例が並びます。家具の設置による床のへこみ、日照による変色、家電の後ろの黒ずみ、下地を傷めない程度の画鋲の穴、寿命による設備の故障、破損や紛失の無い鍵交換は、貸主負担の例に含まれます。
放置した飲み物のシミ、結露を放置したカビ、引越し作業で付いた傷、下地の交換がいるネジ穴、喫煙やペットによる損傷、鍵の紛失や破損は、借主負担の例に含まれます。
一覧は例です。自分の傷が文章に似ているだけで、どちらかに決めたことにはなりません。出典の入口は 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン です。
特約があると、例の前に契約を見る
ガイドラインは、特約で別の負担を定められる場合があることも説明しています。特約があれば、例の表より先に、その文が何を対象にしているかを読みます。探し方は 賃貸契約の特約で見るところ です。特約が書いてあることと、その特約がいつでも優先することとは同じではありません。有効かどうかは、この記事では判定しません。
傷の事実と、原因の説明を分ける
確認するメモは二列にします。
- 見えている事実。場所、大きさ、写真
- 原因の説明。自分の記憶、相手の主張、まだ不明なこと
不明なことを、どちらかの負担として埋めません。壁紙の年数のように、経過年数の考え方が関係する項目は 壁紙の張替え請求で確認すること で欄を分けています。
質問は、どちら負担かではなく材料を求める
「通常損耗なので払いません」と先に結論を書くより、「この傷を、ガイドラインのどの例と、契約のどの条項で見ていますか」と尋ねる方が、相手の根拠が残ります。その答えを見てから、同意するかを決めます。